全体のトーンを作っているデザインの細部はどうなっているのか?を知ることで、そのトーンの作り方を認識し、自分のデザイン制作に取り入れる
ということ。
今回は雑誌GQの2018年3月号をもとにどのような手順でデザインの分析を行なっていくのか、具体的な解説をしていきます。
【雑誌情報】
まずネットで調べてわかる範囲で雑誌GQのターゲット層やデザイントーンなどを確認します。こちらはデータがある場合は参考にするとよいでしょう。
世界的な男性向けのファッション&ライフスタイル情報誌「GQ」の日本版。大人の男性のためのファッションからライフスタイル・カルチャー・アート・デザイン・エンタメ・グルメ・トラベル・ビジネス・クルマなど掲載しています。また、ハイクオリティなライフスタイル情報を中心に、ファッションページも充実しているメンズ総合誌です。ちなみに、VOGUE(ヴォーグ)を発行している CONDE NAST(コンデナストジャパン)の雑誌なので、一般的なファッション&ライフスタイル情報誌というよりも、誌面のイメージはモード誌に近いです。
https://www.magazine-data.com/magazine/gqjapan.html
このような情報を踏まえて誌面を見てみると、男性ターゲットの情報誌ということもあってGQの誌面は男性的で、ベーシック、堅いトーン、シンプルなイメージを受けます。
写真は品質が高くスタイリッシュな印象。フォントのベース(本文)はゴシック系で男性的な印象ですが特殊なものを使っているわけではないのでフォントから受ける印象としてはベーシック、オーソドックスといった感じを受けます。レイアウトも矩形(四角形)を中心に構成されており、全体にキッチリとした印象を受けます。
これはビジネスマンというメインターゲットがあるからでしょう。全体の余白はある程度しっかりとっていますが、誌面の中は適度に文字情報が詰まった印象があるので、すっきり見えつつも情報量が豊富な印象を受けます。
GQの「 レイアウト」
GQのレイアウトは誌面の印象が矩形(四角形)に収まっており、かなりキッチリとした印象を受けます。レイアウトが整って安定している分、写真では遊びや動きを感じます。またそのテイストもまちまち。モノトーンだったりハイコントラストだったりと雰囲気はそれぞれに変えています。
そんな雰囲気の違う写真がおさまってまとまりを感じるのは、ベースになるレイアウトがしっかりと矩形の内に収められているためでしょう。写真の自由さがありながら、全体は揃って、整った印象をキープしています。
下の写真はオブジェクトを赤で囲んでいます。こちらをみるとレイアウトが矩形に収まっている事がよくわかります。
このような、全体が四角のマスにおさまったデザインは整いすぎて動きがなくつまらなく見えてしまうこともありますが、使用している写真に動きがあるため誌面のバランスがしっかりと取れていることがわかります。
GQの【 写真 】
矩形をベースとした安定したレイアウトに対してハイコントラスト、モノトーンなど様々なテイストが使われています。レイアウトが落ち着いているため、写真では雰囲気を変えたり、動きを見せたり、誌面の印象をちょっと変えるような遊び心を取り入れる役割を持っているのでしょう。
全体として切り抜きよりも角版での使用が多くなっています。これも誌面に落ち着きを持たせる効果をもたらしています。(切り抜きが多いレイアウトでは自由で動きのある印象に見えるため、誌面が軽やかに感じます)
(カラフルで動きのある写真)
(コントラストの高い写真)
(モノトーンの写真)
(切り抜きで動きのある写真)
以上のようにカラー多め、白黒、ハイコントラストなど、様々なテイストで写真が使われています。
GQの【 装飾 】
ちなみに、見出しなどで使う飾り、装飾なども全体的に四角い印象。
装飾は少なめでまとめられていますね。
GQの【 フォント 】
基本的な書体はゴシックを中心で、オーソドックスな印象です。
欧文はGotham、和文はタイトル周りはモリサワの見出しゴMB31が使われています。本文は当てはめた感じではモリサワの中ゴシックBBBが使われており、使用されている和文のフォントはモリサワのゴシック系が中心。
ちなみに本文で使われている中ゴシックBBBは伝統的に使われてきたスタンダードなゴシック体。他の書体に比べてやや小さめのサイズに見えるので、可読性がよく、安定した印象の書体です。
見出しではオーソドックスで、適度な太さを持っている見出しゴシックMB31。同じく太めのゴシックであるゴシックMB101などと比べても、字面が小さいので、大きなサイズで使用しても控えめな印象になります。それゆえに押し付けがましさを感じない印象を受けますね。
欧文はゴシック系ではGothamを使っていて、誠実さのあるビジネスっぽい真面目な印象です。とはいえ、Gothamはカジュアルさも感じる書体なので重くなりすぎず華やかな遊び心も取り入れている印象を受けます。
ちなみにGothamは前大統領オバマが選挙戦で使用した書体として有名になりました。
ページによっては、下記のようにセリフのある欧文や、明朝系の書体をアクセントとして所々で配置していますが、基本は上記の書体がベースになっているようです。
GQの【 カラー 】
これまでのページのサンプルを見ていても感じますが、重めで重厚なトーンを使った色味のページが多い印象を受けます。黒や渋いトーンの色味など堅い印象を感じます。
以上が雑誌GQの構成要素です。シンプル&ベーシックなデザインで信頼感のある感じに仕上がっていますが、それだけでつまらなくなってしまわないように写真で全体のバランスをとり、遊び心を垣間見ることができるとてもバランス感覚に優れたデザインです。
GQのようなレイアウトは前職の制作会社で会社案内を制作していた頃に、クライアントの経営者層からとても受けがよかったです。
このようなベーシックなデザインの中では、GQのように写真で印象をコントロールしたり、ちょっと誌面に崩しを入れると遊びもでてバランスを取ったりもできるので、何かと応用の効きやすいデザインです。
使い勝手が良いので身につけて置くといいのではないかと思います。
まとめ
さて、今回は雑誌GQのデザインを解体してみました。ベーシックでシンプルで安定しつつも、洗練され動きがあるデザインを形作っている要素を見ることができたと思います。
このようにその媒体(デザイン)の表現しているトーンがどういったパーツや要素からきているのかを細かく分析し、突き詰めていくと、自分が同様のテイストを作る時に大きな助けになります。
駆け出しデザイナーの皆さんはぜひそんな目線で雑誌やデザインを解体し分析をして見てみるといいのではないかと思います。
今回は以前に下記のpinterstエントリーの中で紹介してた「❸ 収集し各トーンにカテゴライズした画像を細かく分析する」の部分のデザイン分析の具体的な方法を紹介します。
今回の分析方法の紹介では、ある程度の情報量がある媒体でデザインの分析を紹介します。というのも情報量が少ない単ページの媒体(ポスターなど)などで行う際も同様の手順で分析できるので、情報量が多い媒体(ページもの)で説明をしておけば情報が少ない(単ページもの)媒体にも対応できるからです。
要は大は小を兼ねるってことですね。
今回はそのような考えをもとに、「雑誌」を説明のための媒体として選択しました。
デザイン分析の手順
今回のデザイン分析の手順を説明すると、
❶デザイン分析をする対象の「トーン」を確認(自分の主観で判断してもいいのですが、何かで明記されているのが一番いいです)
❷その「トーン」を形作っている構成要素(レイアウト、カラー、写真、フォントなど)の細部をチェックし分析
❸「トーン」の構成要素の分析をいくつもの媒体で行うことで、そのトーンを形作るためにどのような構成要素を使ってデザインをすればいいのか、を理解していく
という流れになります。要は
全体のトーンを作っているデザインの細部はどうなっているのか?を知ることで、そのトーンの作り方を認識し、自分のデザイン制作に取り入れる
ということ。
今回は雑誌GQの2018年3月号をもとにどのような手順でデザインの分析を行なっていくのか、具体的な解説をしていきます。
【雑誌情報】
まずネットで調べてわかる範囲で雑誌GQのターゲット層やデザイントーンなどを確認します。こちらはデータがある場合は参考にするとよいでしょう。
世界的な男性向けのファッション&ライフスタイル情報誌「GQ」の日本版。大人の男性のためのファッションからライフスタイル・カルチャー・アート・デザイン・エンタメ・グルメ・トラベル・ビジネス・クルマなど掲載しています。また、ハイクオリティなライフスタイル情報を中心に、ファッションページも充実しているメンズ総合誌です。ちなみに、VOGUE(ヴォーグ)を発行している CONDE NAST(コンデナストジャパン)の雑誌なので、一般的なファッション&ライフスタイル情報誌というよりも、誌面のイメージはモード誌に近いです。
https://www.magazine-data.com/magazine/gqjapan.html
このような情報を踏まえて誌面を見てみると、男性ターゲットの情報誌ということもあってGQの誌面は男性的で、ベーシック、堅いトーン、シンプルなイメージを受けます。
写真は品質が高くスタイリッシュな印象。フォントのベース(本文)はゴシック系で男性的な印象ですが特殊なものを使っているわけではないのでフォントから受ける印象としてはベーシック、オーソドックスといった感じを受けます。レイアウトも矩形(四角形)を中心に構成されており、全体にキッチリとした印象を受けます。
これはビジネスマンというメインターゲットがあるからでしょう。全体の余白はある程度しっかりとっていますが、誌面の中は適度に文字情報が詰まった印象があるので、すっきり見えつつも情報量が豊富な印象を受けます。
GQの「 レイアウト」
GQのレイアウトは誌面の印象が矩形(四角形)に収まっており、かなりキッチリとした印象を受けます。レイアウトが整って安定している分、写真では遊びや動きを感じます。またそのテイストもまちまち。モノトーンだったりハイコントラストだったりと雰囲気はそれぞれに変えています。
そんな雰囲気の違う写真がおさまってまとまりを感じるのは、ベースになるレイアウトがしっかりと矩形の内に収められているためでしょう。写真の自由さがありながら、全体は揃って、整った印象をキープしています。
下の写真はオブジェクトを赤で囲んでいます。こちらをみるとレイアウトが矩形に収まっている事がよくわかります。
このような、全体が四角のマスにおさまったデザインは整いすぎて動きがなくつまらなく見えてしまうこともありますが、使用している写真に動きがあるため誌面のバランスがしっかりと取れていることがわかります。
GQの【 写真 】
矩形をベースとした安定したレイアウトに対してハイコントラスト、モノトーンなど様々なテイストが使われています。レイアウトが落ち着いているため、写真では雰囲気を変えたり、動きを見せたり、誌面の印象をちょっと変えるような遊び心を取り入れる役割を持っているのでしょう。
全体として切り抜きよりも角版での使用が多くなっています。これも誌面に落ち着きを持たせる効果をもたらしています。(切り抜きが多いレイアウトでは自由で動きのある印象に見えるため、誌面が軽やかに感じます)
(カラフルで動きのある写真)
(コントラストの高い写真)
(モノトーンの写真)
(切り抜きで動きのある写真)
以上のようにカラー多め、白黒、ハイコントラストなど、様々なテイストで写真が使われています。
GQの【 装飾 】
ちなみに、見出しなどで使う飾り、装飾なども全体的に四角い印象。
装飾は少なめでまとめられていますね。
GQの【 フォント 】
基本的な書体はゴシックを中心で、オーソドックスな印象です。
欧文はGotham、和文はタイトル周りはモリサワの見出しゴMB31が使われています。本文は当てはめた感じではモリサワの中ゴシックBBBが使われており、使用されている和文のフォントはモリサワのゴシック系が中心。
ちなみに本文で使われている中ゴシックBBBは伝統的に使われてきたスタンダードなゴシック体。他の書体に比べてやや小さめのサイズに見えるので、可読性がよく、安定した印象の書体です。
見出しではオーソドックスで、適度な太さを持っている見出しゴシックMB31。同じく太めのゴシックであるゴシックMB101などと比べても、字面が小さいので、大きなサイズで使用しても控えめな印象になります。それゆえに押し付けがましさを感じない印象を受けますね。
欧文はゴシック系ではGothamを使っていて、誠実さのあるビジネスっぽい真面目な印象です。とはいえ、Gothamはカジュアルさも感じる書体なので重くなりすぎず華やかな遊び心も取り入れている印象を受けます。
ちなみにGothamは前大統領オバマが選挙戦で使用した書体として有名になりました。
ページによっては、下記のようにセリフのある欧文や、明朝系の書体をアクセントとして所々で配置していますが、基本は上記の書体がベースになっているようです。
GQの【 カラー 】
これまでのページのサンプルを見ていても感じますが、重めで重厚なトーンを使った色味のページが多い印象を受けます。黒や渋いトーンの色味など堅い印象を感じます。
以上が雑誌GQの構成要素です。シンプル&ベーシックなデザインで信頼感のある感じに仕上がっていますが、それだけでつまらなくなってしまわないように写真で全体のバランスをとり、遊び心を垣間見ることができるとてもバランス感覚に優れたデザインです。
GQのようなレイアウトは前職の制作会社で会社案内を制作していた頃に、クライアントの経営者層からとても受けがよかったです。
このようなベーシックなデザインの中では、GQのように写真で印象をコントロールしたり、ちょっと誌面に崩しを入れると遊びもでてバランスを取ったりもできるので、何かと応用の効きやすいデザインです。
使い勝手が良いので身につけて置くといいのではないかと思います。
まとめ
さて、今回は雑誌GQのデザインを解体してみました。ベーシックでシンプルで安定しつつも、洗練され動きがあるデザインを形作っている要素を見ることができたと思います。
このようにその媒体(デザイン)の表現しているトーンがどういったパーツや要素からきているのかを細かく分析し、突き詰めていくと、自分が同様のテイストを作る時に大きな助けになります。
駆け出しデザイナーの皆さんはぜひそんな目線で雑誌やデザインを解体し分析をして見てみるといいのではないかと思います。